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混沌の館
第6章 30代バツイチの美女
 その日の話題は、主にお互いの職場に及んだ。

 私は、久美の離婚理由や恋人の有無、そして今後私と色恋沙汰に発展できるのか、そういう踏み込んだ話題にも持ち込みたかったのだが、なかなか切り込む事が出来なかった。


 無情にも時間は過ぎて行き、そろそろ帰ろうかとお店を後にしたのは22時を少し過ぎた頃だった。

 久美を自宅まで送り届ける車中、会話は途切れがちになり、私はこの先、久美との関係をどう進展させるかを考えていた。



 ちょっと走らせればホテル街がある。サイトに登録している以上、女性の方も少なからず大人の関係を視野に入れているはずだ。誘えば応じてくれるかも知れない。

 いや、焦ってせっかくここまで進展させた関係を壊すのは得策ではない。久美の方も多少は私に好意を持っている様だ。じっくり構えていた方が良いだろう。

 しかし、このまま飯友で終わるのも寂しい。私は、何度も策案しては否定し、また策案するという作業を繰り返していた。



 そうこうするうちに、とうとう久美のアパートに着いてしまった。


 今日も大して進展はなかったか・・・いや、手を繋いだだけでも十分じゃないか。

 中年のオヤジが何とも情けない。


 やや落胆した気分で挨拶を済ませようとした時、思いがけない事が起こった。





「あの・・・コーヒーでも飲んでいきませんか?」





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