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第1章 第一部【白桜記】　其の一・山桜

　聡一郎は主(あるじ)の真後ろまで迫っていたが、その様を見て固唾を呑んだ。信頼の馬は前脚を高々と持ち上げ、今しも信頼を振り落とそうとするように見えた。
　が、息を呑んで見守る聡一郎の手前で馬は止まり、馬上の信頼は見事なまでの鮮やかさで、ひらりと地上へと降り立った。馬に声をかけながら、その背を撫でる信頼に、聡一郎は多少の困惑を滲ませた声で言った。