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第2章 社内の風景

キーボードを叩く音と、声を潜めるテレビ会議独特のこもった声が社内に充満している。

坂口啓介はイヤホンを外すと、コーヒーをいれようと席を立った。
ドリンクコーナーには、今年40歳になるというのにまだ独身の田村がマシーンの前でコーヒーがカップを満たすのを待っていた。

「よぉ・・・」
「うっす・・・」

坂口の声に明るい表情で軽く返している。
取り出したコーヒーに砂糖とミルクを注いでいる。

（おいおい・・・スティック二本て・・・）

坂口は呆れた顔で思ったが口にするのはやめた。
田村の腹を見れば、さすがにシャレにならないと思ったからだ。

昔、自分も太り気味だった時に散々「太った？」とか、あいさつ代わりにされたトラウマから、人がムッとするような事は言わない主義にしている。