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調教物語~ある男の性癖~
第31章 再生の時
やがて、きつねうどんが仕上がって
女がテーブルまで運んでくれた。
「熱いから気を付けてね」
「ありがとうございます」
割り箸を裂きながら
ふと何気なく、その女の顔を見た。
「あっ!!」
女の顔を見て武郎は思わず大きな声を上げた。
「何よ、びっくりするじゃない」
そう言って女も武郎の顔を見て
「ええ~っ!」とこちらもまた
素頓狂な大声をあげた。
「あんたは…」
「あなたは…」
同じセリフを二人同時に発して
驚いた顔で見つめあった。
「ちょ、ちょっと待っててね」
女は大慌てで入り口の営業中の木札を裏返して
準備中と書かれているものに替えた。
そして誰にも邪魔されたくないとばかりに
しっかりと入り口に鍵をかけた。
「びっくりしたわ!
あんた、確か東京で私を買ってくれた男だよね?」
少しだけ髪に白いものが混じってしまったが
それは紛れもなく
武郎の筆下ろしをしてくれた薫だった。
確か旦那の転勤に付いていくので
風俗の店を辞めたはずだった。
「薫…さんですよね?」
「ええそうよ!嬉しいわあ
覚えてくれてたのね…」
自分を男にしてくれた女性なのだ。
忘れるはずはなかった。
「そうですか…旦那さんの転勤先って
大阪だったんですね」
武郎は懐かしがりながら
うどんを啜った。

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