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第8章 『飼い主』

「なんでしょう？」
「荒井さん、どこか出かけられたみたいですよ」

女性は少しだけ戸惑いながら教えてくれた。

「そうなんですか。それは失礼しました」

とりあえず無事に家まで帰ってきたということを聞いて智輝は安心した表情を浮かべる。

「……その……誰か男の人と寄り添うように出て行きましたよ」

隣人の言葉で智輝の安堵の笑顔は張り付いたように固まった。

「えっ……」
「ご、ごめんなさい。余計なことでしたね」

隣人は慌てたようにドアを締め、室内へと消えていってしまった。

「奈緒が……男と……？」

状況が整理できない智輝は呆然と一人、その場に立ち尽くしていた。