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不良の彼は 甘くて強引
第25章 温もり
…動物というものは
時として、人の心を和ませる技に関しては人間よりもよほど達者であろう。
……ジッ
匠と目を合わせたその小さな生き物は、今度は怯えたりはしない。
「…!」
腕の中で丸く収まったまま
邪気の無い瞳を彼に返していた。
「…大丈夫です」
まるで呪文のように柚子は繰り返す。
見つめ合う二人をただ静かに見守っていた。
“この人は…きっと”
慣れていないんだ
この温もりに。
意味もなく無条件に向けられる潤んだ瞳に。
彼らは穢れを知らない…
言葉の通じない彼らは、不平不満を口にすることもありはしない。
だからこそ、彼らが人間に向ける眼差しはただただ平等で、それでいて純粋なのだ。
…匠さんは戸惑っている。
彼は今まで、こんな目で見つめられた経験がない…
いや、その瞳に気がつくことなく生きてきたのだ。
周りの人間を敵と思い、周囲の思い遣りをはねのけてきたんだ。
きっと……。

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