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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第10章 ~暗闇の誘惑~

それでも律儀に謝るあたりが兄らしい。
他人にあまり興味をもたないケイルだが、根は優しい兄である。
場違いで的外れな物言いする補佐官に呆れていたかも知れない。そうとは知らず落ち込むサクナに何も言ってやれないのは、ケイルも同じくらい辛かったのだろう。
「お前は本当に覚えてないのか?」
「少し……多分、告別式の時だよね。小さい時、ルカに合うとしたらその日しかないから。でも、どうして覚えてないんだろ?」
ケイルは、少し意味ありげに苦笑する。
サクナにとって、当時のルカと接触したのかすらわかっていない。
「お前は、殿下だと思ってなかったからな」
「殿下……あ、そっか」
「知りたければ直接ルカに訊け、俺が言うことじゃないしな」
そう言ってケイルは、フッと表情を緩めた。
「ルカがそれを言わないのはきっと意味があるんだよ。興味本位で訊いちゃいけない気がする」

