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シャイニーストッキング
第21章 もつれるストッキング5   美冴
 80 最悪でひどい夜…(4)

 飲みかけの缶ビールを手に持ち、静かに彼が近寄り、わたしの傍らのベッドの上に座り、覗いてきた…
「あ…」
 すると、目だけを開き彼を見つめているわたしの目に気付き、そんな小さな声を漏らす。

 その声は…
 まだ起きやしないだろうと思っていたのに目を開けていた…
 という、そんな意外性の声音であった。

 起きたのか…
 そして、そんな目で…
 いや、その彼の目の色には…
 わたしに対する慈愛の色が浮かんでいた。

 そう、わたしへの慈愛の想いの色…

 それは、さっきまでのわたしの醜さ、弱さ、欺瞞、という感情を否定せず、突き放しもしない、慈しみの情愛という大きな優しさの想い。

 そんな彼の想いがその目から一瞬にして伝わり、逆に、さっきまで渦巻いていた、自分の心の邪な醜さの昂ぶりが再認識されてしまい…
 少し緩みつつあった不穏な騒めきが、また再び甦ってくる。
 そしてまた、心の中には…
 それに相反する、彼に対する悔しさと苛立ちという、完全な敗北感の想いまでもが沸き起こってきていた。

「ふうぅ…ぅぅ……」
 わたしはそんな敗北感に必死に抗おうと、両手を着き、なんとか上半身を起こし…
「はぁぁ………」
 と、息を吐き、顔にかかった乱れた髪を掻き上げながら…
「………………………」
 彼を見る。

 まだ…
 まだ、負けてはいない…
 いや、いない筈…
 わたしの魅力で彼を…
 彼を、大原浩一というオトコを取り戻し、いや、略奪する………んだ…………
 と、必死に、さっきまでの欺瞞の昂ぶりの衝動の想いを反芻し、浮かばせるのだ…が……

 彼のその…
 慈愛という色の目を見て…
 その濁情といえる激情であったはずの流れが…
 みるみる、静かに、穏やかに、緩やかに、鎮んでいくのを自覚してしまったのだ。

 あぁ、ダメだ、ダメだわ完全に負け…
 ううん、彼の優しさに飲み込まれてしまった…
 そして、その敗北感という自覚の想いは逆に、わたしの心を違う意味で苛立たせてきていた。

「あぁ……ふぅぅ……最悪だ…わ……」
 そう、最悪…
「あぁ…ひどい……夜………」
 本当に、ひどい夜だわ…
 
 それは、わたしの天の邪鬼な本当の想いからの苛立ちのコトバ…
 認めたいけど…
 認めたくはない…

 相反する、矛盾な想い。
 




 
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