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キャンバスの華
第5章 華の嫉妬
華はまだ20代半ばで
当時の女性としては嫁に行き遅れているのだが、 それでも男性経験がさほど豊富ではない。
高等女学校に在籍中、
美術の腕を買われて学校を中退した。
師範の美術教師の家で住み込みで働き
そのときにアトリエで
その師範から処女を奪われた。
裸婦のモデルをしろと言われ
師範の制作意欲の集中力が途切れる度に
その場で性交を強要された。
当時の師弟関係は絶対で
師匠が求めるのならば
生理で出血していようが
おかまいなしに体を開かなければならなかった。
そんな世相であったが、
ごく一部ではあるが
女性の人権を求める運動家もいた。
華は次第にそんな思想に傾倒し、
ある日、ついに我慢できずに
師匠の家を飛び出した。
嫁入り前の娘が男と一つ屋根の下で
暮らしていたという噂は
決して良いものではなかった。
両親は戻ってきた華を
快く迎え入れようとはしなかった。

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