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夜の蝶の物語
第3章 年増のリリーさん
スミレがマンションから出ると、
表の道路にワゴン車に乗った稲本が
迎えに来ていた。
「時間、ピッタリだったでしょ?」
稲本は少しだけドヤ顔で鼻の穴を膨らました。
スミレが後部座席に体を落ち着かせると
稲本は鼻をクンクンさせ
「あれ?シャワー無しだったんですか?」と
イライラさせることを言った。
「いいからとっとと車を出せよ!」
スミレは来たときと同様に
運転席の背もたれをおもいっきり蹴った。
事務所に帰ると、
店長とリリーさんが
激しく言い合いをしていた。
「ねっ、だからさあ、
もっとサービスをしてあげないと
お客さんが喜んで
リピートしてくれないわけだよ」
どうやら最近、指名が少ないのを
咎められているようだった。
「私、ちゃんと仕事をしているつもりですけど」
リリーさんも負けずに言い返す。
リリーさんは、
うちのお店の中では
一人だけのアラサーの女です。

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