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黒い瞳
第7章 淳子~19歳~
「じゃあ・・やっぱり健太は・・・」
現実を受け止め、淳子は号泣した。
それは母の死に心の中で流した涙の
何倍もの悲しみの涙だった。
健太が警察官である限り、
こういうことはありうると覚悟はできているつもりだった。
でもまさか現実になろうとは・・・
「つらい話なんだが・・・」
義父が健太の葬儀のことについて話はじめた。
淳子の体調を考え、
警察葬は1週間後にしていただいてはどうだろうということ。
その間、遺体は冷凍安置しようと思うということ。
「ほんとうは、そんな冷たい箱の中に何日も寝かせるのは忍びないんじゃ・・・
密葬して早く荼毘にしてあげるのがいいのかもしれん・・・
だが、あいつに一目、娘を対面させてやりたいんじゃ。
医者が言うには、生まれてすぐに外出させるのは許可できんと言いよる・・・」
そう言って義父は歯を食いしばって泣いた。
一週間後、若林健太警部の葬儀が執り行われた。
葬儀に先立ち、淳子は由紀子を抱いて
遺体安置所の冷凍庫からだされた健太と対面した。
由紀子を大勢の人たちの中へ連れ出すのは
感染等の問題から控えるようにきつく言われていたからだ。
健太の遺体は警察の制服を着せられていた。
まるで静かにねむっているようだった。
「健太・・・娘の由紀子よ・・・」
女の子だと知ったらどんな顔をしただろう・・・・
父親が口を揃えて言うように、
この子はどこにも嫁にださん。
そう言って壊れ物を抱くように、
ぎこちない手つきで抱いただろうか・・・

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