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黒い瞳
第6章 淳子~18歳~
淳子は鏡台に向かって
化粧の最後の仕上げに紅をひく。
もうすぐ、日が暮れる。
夜が淳子の出勤時間だ。
父の家を飛び出した後、淳子はとにかく逃げた。
翌朝の新聞を買いあさり、
傷害事件や殺人事件の記事を探したが
父の事は載っていなかった。
案外と軽症だったのかもしれない。
それに父は鬼畜の行為がばれるのを恐れ、
被害届を出さなかったのだろう。
しかしながら、なににもまして、
淳子は生きていくために
職を手に入れなければならなかった。
淳子が選んだのは夜の仕事だった。
実入りのよさに惹かれたのはいうまでもなかった。
15歳という年齢は18歳でごまかし通した。
化粧をすれば大人びた顔立ちと体つきで
すんなりと面接にパスした。
夜の仕事といっても風俗関係でなく
お水の方を選んだ。
『カエルの子はカエルね』
母と同じ仕事についた自分を淳子はそう思った。
この仕事について3年。
今や面接時に嘘をついた年齢に追いついてしまった。
自分でも天職ではないかと思えるほど、
お水の仕事には早くからなじめた。
今や、お店ではナンバー1の売れっ子ホステスだ。

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