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縁
第8章 クズの純情

「どうしても行くのか?」
「ああ」
「そうか……、残念だが、親子でのんびり過ごしてぇだろうし、わかったよ」
ヤスは理解を示し、引き止めるのを諦めた。
別れを惜しむヤスに見送られ、辰は絢音を連れて歩き出した。
まず昼を食べる為にめぼしい所を探したが、安っぽい食堂じゃ温泉街と変わらない。
ちょうど飲食店が立ち並ぶ通りを歩いていたが、辰は通りすがりに一軒の洋食屋に入った。
絢音は辰の後ろについて店内に入り、隅のテーブル席に座ったが、ピカピカに磨かれたテーブルには真っ白なレースのテーブルクロス、テーブルの真ん中には花が飾ってある。
綺麗に折られた紙ナプキンの上に、ナイフ、フォーク、スプーンが置いてあったが、絢音はちょっとドキドキして、緊張しながら辰と向かい合っていた。
「なんでも好きなもんを食え、ほら、メニューだ」
辰はわきに立てかけられたメニューを取ると、絢音の前に差し出した。
絢音は恐る恐るメニューを開いてみたが……何がどんな料理なのか分からない。
「辰さん、私……わからない」
助けを求めるように聞いた。
「ははっ、そんなに畏まるこたぁねぇよ、そんじゃあな、オムライスうめぇぞ、食ってみな」
辰は緊張した様子で椅子に座る絢音を見て、緊張を解きほぐすように笑顔で言った。
「あ、はい……、じゃあそれで」
絢音はすんなり頷いたが、分からないのだから頷くしかない。
辰は店の者に声をかけ、オムライスとポークカツを頼んだ。
この洋食屋は、街にいる時にたまに立ち寄っていた。
だから辰は慣れているが、絢音はこんな洒落た店に来るのは初めてだった。
というよりも、父親と暮らしていた時は洒落た店どころか、店に行く機会すらなく、唯一行くのが酒屋……。
「ああ」
「そうか……、残念だが、親子でのんびり過ごしてぇだろうし、わかったよ」
ヤスは理解を示し、引き止めるのを諦めた。
別れを惜しむヤスに見送られ、辰は絢音を連れて歩き出した。
まず昼を食べる為にめぼしい所を探したが、安っぽい食堂じゃ温泉街と変わらない。
ちょうど飲食店が立ち並ぶ通りを歩いていたが、辰は通りすがりに一軒の洋食屋に入った。
絢音は辰の後ろについて店内に入り、隅のテーブル席に座ったが、ピカピカに磨かれたテーブルには真っ白なレースのテーブルクロス、テーブルの真ん中には花が飾ってある。
綺麗に折られた紙ナプキンの上に、ナイフ、フォーク、スプーンが置いてあったが、絢音はちょっとドキドキして、緊張しながら辰と向かい合っていた。
「なんでも好きなもんを食え、ほら、メニューだ」
辰はわきに立てかけられたメニューを取ると、絢音の前に差し出した。
絢音は恐る恐るメニューを開いてみたが……何がどんな料理なのか分からない。
「辰さん、私……わからない」
助けを求めるように聞いた。
「ははっ、そんなに畏まるこたぁねぇよ、そんじゃあな、オムライスうめぇぞ、食ってみな」
辰は緊張した様子で椅子に座る絢音を見て、緊張を解きほぐすように笑顔で言った。
「あ、はい……、じゃあそれで」
絢音はすんなり頷いたが、分からないのだから頷くしかない。
辰は店の者に声をかけ、オムライスとポークカツを頼んだ。
この洋食屋は、街にいる時にたまに立ち寄っていた。
だから辰は慣れているが、絢音はこんな洒落た店に来るのは初めてだった。
というよりも、父親と暮らしていた時は洒落た店どころか、店に行く機会すらなく、唯一行くのが酒屋……。

