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第32章 【第三十二話】魔性の女

　事情を知らないアーベルは不思議そうに首を傾げた。

「いや、さっきのあの訳のわからない人たちに言われた」
「そんなくだらないことを言うために私は足止めを食らっていたのですか？」
「そうだ。反省しろ、馬鹿者」

　セラフィーナは魔女がなにか分からない。だけどいい意味ではないのは分かった。

「セラは魔女というよりは魔性の女だな」
「……なに、それ」
「俺を魅了して止まない」
「なるほど、私にとってアリシアの存在と一緒、と」
「納得されても困る」

　むーっとセラフィーナは膨れたが、新たな書類が追加されたので、そちらの作業に戻ることにした。

「魔女、ねぇ」

　魔族のくせに、人間のセラフィーナを捕まえて魔女だなんて言ってきた二人にルードヴィグは呆れていた。