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大魔王の子を孕みます
第10章 新月

「魔族に結婚という風習はございません。」
渋い声でメフィストが言い切る。
「結婚がないって…、あのメロン女はライズの妻だって言ってんじゃん。」
「結婚は永遠の愛を誓うもの…、永遠など存在しないし、愛など不確かなものを魔族は認めません。」
嘘がない魔族らしい考え方だと感心する。
「じゃあ、なんで妻なんだよ。」
「エリス様のお父上であるレイブン様がエリス様を女王にと望んだからです。」
「やっぱり、エリスを孕ませれば良かったって話じゃん。」
「違います。ライズ様はエリス様を女王にする事を望まなかった。結果として、エリス様に妻と名乗る事を認めただけです。」
「なんで認めてんだよ。」
「お父上に責められるエリス様が不憫ですから…。」
メフィストが皺だらけの顔をくしゃくしゃにして苦笑いする。
「魔族のくせに…、同情したって事か?」
「魔族にも慈悲はございます。」
ふふふと笑うメフィストの影にアミルさんが見える気がする。
人間である俺の為に少しでも魔族が理解出来るようにと普段は言わない話でも付き合ってくれてる優しさが伝わって来る。
「なあ、ライズの母ちゃんって人間だったのか?」
ふとメフィストに聞いてみる。
「左様です。ですが詳しい事は私の口から申し上げる事は出来ませぬ。」
駄目なものは駄目だとメフィストは俺を突き放す。
真面目だよな…。
ライズに対してもそう思う。
オタクで卑屈だった俺に比べて嘘がない魔族ってかなり真面目な生き物だと改めて考え直す。
「けど、メフィスト…、ミルに変な事はすんな。」
一応は釘を刺す。
しかし、メフィストは
「…と言われますと?」
と真面目に聞き返す。

