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第4章 許嫁理由

だが貧しくても優しい母と楽しく暮らせる。
そんなささやかな梨華の幸せも神様は許してはくれなかった。

梨華が小学校五年生の時、母が倒れた。

無理をしすぎた過労のせいで倒れたときにはもう体がボロボロになっていた。

寡婦協会の紫水の助けもむなしく、梨華の母はあっさりと他界した。

そして梨華は遂に天涯孤独の身となってしまった。


唯一の保護者を失った梨華を救ったのは、やはり有馬紫水だった。

孤児となった梨華は紫水の運営する孤児の保護団体に引き取られた。

それまでも何かと気をかけていてくれた紫水は孤児院に入った梨華にも色々と気を使ってくれた。
忙しい身にも関わらず、時間を使っては梨華に会いに来ては世話を焼いてくれた。

しかし不幸の只中にいた梨華は紫水の優しささえ壁を作り、自分の殻に閉じ籠っていた。
それでも紫水は梨華に愛情を注ぎ、次第に梨華も紫水にだけ心を開いていった。