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戦場に響く鈴の音
第5章 一夜
俺が居る座敷に男が3人通される。
みっともなく着物を着崩した花魁が豊満な胸の谷間と太腿を惜しげも無く晒す姿を見た男の1人が短く口笛を吹く。
男の口笛など気にする様子を見せない花魁は俺にベッタリと寄り添い盃に酒を注ぐ。
「俺は水野 茂吉(みずの もきち)、あんたが黒崎の領主様のご子息か?」
花魁に無視された男が俺だけに話し掛ける。
茂吉は無精髭を生やし、適当に髪を束ねただけのだらしない男という印象だ。
無駄な話を省き、俺は状況の確認をする。
「頼んでたものは揃ったか?」
「1000は天音に向かわせたよ。この2人が頼まれてた専門の技術者だ。」
茂吉がニタリと下品に笑う。
茂吉には領主という身分が通用しないらしい。
人身売買などを裏でやってる小悪党。
しかし、遊郭などにも出入りしており、労働者集めなどはこういう人間に頼むのが確実だ。
後の2人はひたすらおどおどとして俺を見る。
技術者とはいえ、普段は街の寺子屋などで師匠をしてる程度の身分の者だ。
領主の目通りなど一生に一度あるかないかの立場だと俺みたいな若造にでも怯えた表情を浮かべやがる。
「俺が頼んだのは最低2000の人集めで可能であれば3000となってたはずだ。」
怯えた技術者に興味は無い。
この場では茂吉のような男を俺に従わせる事が重要だ。
「ですがね。坊ちゃん…、今は田植えの時期なんすよ。」
茂吉が予想通りの言い訳した瞬間に腰から抜いた刀を茂吉の首に当ててやる。
「ちょっとっ!?」
花魁が叫び
「ひいぃぃっ!?」
と怯えた技術者達が腰を抜かす。
茂吉は微動だにしない。
切られないとわかってる。
遊郭での人斬りは御法度…。
酔っ払いやヤクザな人間が多いからこそ、遊郭で人斬りが始まればキリがない。

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