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昼想夜夢~君、想ふ~
第12章 雷鳴
思えば、彩花と外で会った事なんてない。
いつもいつも、どちらかの部屋でこそこそと会ってるだけ。
外で会ったと言えば、最初に彩花を紹介されたあの居酒屋でだけ。
だから、たまには外で会おうかと思っただけだ。
ここは都心から少し離れた喫茶店。
都心から離れてるせいか客は少ない、が
レトロな雰囲気が漂いどこか懐かしさを感じる店内。
仕事が早く終わった日、休みの日などはここへ休息に来ることもしばしば。
仕事を終えた俺はこの喫茶店の端の席に座り熱いコーヒーを飲んでいた。
俺が来店したのは夜の8時。
ここへ来てからかれこれ30分ぐらい経っている。
テーブルには俺が注文したコーヒーと、水のグラスが二つ…。
「――――…」
心を落ち着かせようと熱いコーヒーを注文したのに、こうしてる間にも心がざわつく。
いつもなら落ち着くはずのコーヒーの香りさえも不快に感じる。
ここのコーヒーは大好きなはずなのに、何でだ?
静かなジャズが流れる店内に、来客を知らせるドアベルの音が鳴り響いた。
―――――チリン…。
小さなドアベルが鳴り開け放たれた店のドア。
「いらっしゃいませ」
カウンターの中で洗い物をしてる店長の声が聞こえた。
今やって来た来店者の方に目をやると
「あぁ、来たか…」
「……はぁ」
そう。
今やって来た来店者は彩花だ。
俺が指定したこの喫茶店に彩花はやって来たのだ。
店内の端の席に座る俺を見つけると、彩花はうんざりした顔で俺に近づいて来る。

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