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海猫たちの小夜曲
第5章 時間よ、止まれ ~海色のグラスと小麦色の少女④~
「あたし……遥みたいに綺麗じゃないけど……先生に……抱いてほしいです……。」
 わたしは改めて先生に言った。

「……望海ってば、そういうこと言わないの。望海は自分が気付いてないだけで、すごく綺麗だよ。」
「でも、あたし、日焼けしてて、遥みたいに色も白くないし……」
 バイトで海に出ることが多いせいか、あたしはいつも日焼けしていて、それは結構なコンプレックスなのだ。

「あのさあ、気付いてないのかもしれないけど、水泳部の男の子たちって、望海の足とか胸とか、すっごくいやらしい目で見てるよ。尾原君とか、あからさまだけどな。あいつ、絶対、家じゃ望海のことをオカズにオナニーしてるよ。」
 文也の話が出て、わたしは思わず赤面した。
 遥に改めて指摘されると、保育園からの幼馴染に、自分がそういう目で見られている、ということが恥ずかしくて仕方ない。

「先生だって望海のこと、いやらしい目で見てたんじゃないですか?だって、前にみんなでシュノーケリングしたとき、先生、望海のこと、かなり見てましたよね。望海の水着姿、グッときてたんじゃないですか?」
「それは……まあ、僕も男だし……。」
 先生が少しばかりバツの悪そうな顔をして言葉を濁す。

「あの……あたしで……あたしの水着姿なんかで、興奮してくれたんですか?」
 初めてみんなでシュノーケリングに行った時の水着なんて、セパレートのスポーツ下着みたいな色気も素っ気もないもので、あたしは正直、こんな水着しか持っていないことが恥ずかしかったのだ。

「……ああ、興奮したよ。陽に焼けた君の肌を僕のものにしたいと思った。だから君が、僕のことを好きだと言ってくれた時は嬉しかったよ。あの時は、必死に、大人の男のふりをしていたけど、ね。」
 
 先生はそう言って顔を赤くした。

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