この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第10章 甘い微熱と寂しさと
────山下サイド────
今日はなんだか調子がおかしい。
やけに身体がだるいし、咳もでるし。
食欲もなくて、朝は何も食べてきていない。
それでも一日くらい乗り切れるかなと思って、
マスクを着けて仕事にやってきたんだけど……
「ユイさん、ここお願いできますか?」
「……ん、はい。了解です……。」
だめだ、頭がぜんっぜん回らない……。
とりあえず手渡された書類を受け取る。
えーと。
あ、これ白馬くんに回さなきゃいけないやつだ。
ここをチェックして手直しして、
データをパソコンに打ち込んで。
うん、手慣れた作業ならそれなりに出来そう。
手際よくキーボードを打ち、単純な作業を済ませる。
よし、あとは白馬くんに渡すだけだ。
席から立ち上がり、彼に書類を渡そうとした
そのとき。
「白馬くん、これおねが……っ」
彼の目の前でぐらりと歪む視界。
ふらつく足元。
────あれ、なんか、やばい。
自分の体重を支えきれず
そのまま倒れそうになったところを
白馬くんが咄嗟に受け止めてくれた。
「っと…先輩、大丈夫ですか?」
「……すみません、少し躓いてしまって。」
彼に抱きかかえられているようなこの状況。
早く起き上がらないと色々まずい。
すでに四方から視線感じるもん。
そう思って、彼から離れようと手に力を入れたんだけど。
「……あの、白馬くん?」
なぜか離してくれない。
それどころか私の背中に手を回して
背中を優しくさすってきた。
戸惑う私の耳元に、彼がそっと口元を寄せる。
「ユイ。俺が仕事終わるまで、おうちでいい子に待てる……?」
私だけに聞こえるくらいの、小さな声量。
……やっぱり体調悪いのバレてた。
観念して小さく頷くと、
彼が私を起き上がらせて、腕を離してくれた。
「申し訳ありません課長。山下さんが具合悪いそうなので早退させてあげてください。」
白馬くんが私に代わって申告する。
その言葉に課長は快く了承してくれた。
いい会社でよかった……。
私は課長と白馬くんにお礼を言い、
力の入らない身体で帰る支度を整える。
にしても、白馬くんあんなことして大丈夫なのかな。
絶対関係疑われるよアレ。
頭の回らない頭でそんなことを思いながら、
私は一人その場をあとにした。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


