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ひと夏の恋……そして……
第22章 それぞれの想い

「うん。あのサインを思い出した瞬間、間違いないって確証したんだ。――分かっても……気持ちが戻ることがなかった。色々ね。佐伯さんに向かって言ってた言葉は、実は和泉に言っていた言葉でもあるの。どういう理由で和泉があの島に来たのか分からないけど、私の気持ちは固まっていたから伝えたかった、夏樹が好きで夏樹と共に生きて行くって。もし……あの時の約束を気にしているなら申し訳ないなって思って」
和泉が佐伯千春として島に来た理由は今でも分からない。
分からないけど、あの時の私ではないと知ってほしかった。
和泉が言ったように時は確実に流れ変化する。
私の心も和泉が好きで好きでたまらなかった時は過ぎ、前に進んでいる。
もし、あの時の約束を守って会いに来てくれても、あの時の私はもういないのだと分かっていてほしかった。
「そうだね。最後に言葉を交わしたのが来年も会いに来るからだったからね」
「うん。初めの頃は待ってたんだよ。待ってたけど、5年は長すぎたよ」

