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ひと夏の恋……そして……
第21章 流れる時の中で

佐伯さんと金平さんは血を分けた本当の兄弟だと、金平さんから教えてもらった。
苗字が違うことを疑問に思い聞けば、佐伯さんは父方の妹夫妻の養子になり、子供に恵まれなかった妹夫妻の養子になることになったという。
大学卒業までは金平家の姓を名乗り、大学を卒業と同時に佐伯の姓を名乗りだしたのだと聞いた。
『あいつは家を出たがっていたからな。次男ということもあり自由にさせてきたつもりでも、本人にとっては窮屈だったんだろう。佐伯家の養子になるのも急に決まり全てを諦めさせた……それもあって俺の事を嫌っていたし、喜んで養子に行ったがな』
と、本当に寂しそうに言葉にしたのを今でも覚えている。
佐伯さんにしても金平さんにしても、これだけ大きな会社の息子となればプレッシャーも苦労も私の様な平凡な人間には計り知れない。
それでも、そこで生きていかなければならない運命だと、佐伯さんは全てを受け入れていたという。

