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第1章 再会

当時私は、同級生の男子、高橋亮と交際していて、将来を誓い合っていました。
亮の事は、山崎夫妻も知っていましたが、私に佐原さんとの結婚を強く勧めてきました。
『栞の幸せの為だ』と言って…

たしかに、私の様な境遇の女には、もったいない位の縁談です。
でも、私は知っていました。
里親が結婚を勧める本当の理由を…

当時、山崎鉄工所は経営が行き詰まっていて、その銀行からの融資が、どうしても必要だったのです。
私を拾って、ここまで育ててくれた山崎夫妻に、恩返しするのは当然の事です。

私は高校を卒業すると、すぐに結婚して、翌年、長女の彩音が生まれました。
このご時世に、経済的不安もなく暮らせるのは恵まれていると言えるでしょう。

でも…
私は、心の底に、いつも満たされない思いを抱えていました。

そして、彼との再会によって、私の中で何かが変わり始めたのです。