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第8章 十六夜月(いざよい)

朝まで起きそうにはなかったが、東海林は雅の手をずっと握り締めていた。

翌朝、うとうとしてしまっていると、握っていた雅の手が引かれた。

東海林がベッドにうつ伏せていた身体を起こすと、上半身を起こした雅が不思議そうにこちらを見つめていた。

「……雅様。良かった目を醒まされて!」

東海林の胸の奥がぎゅっと締め付けられ、涙が零れ落ちそうになる。

握っていた手を引き、雅を自分の胸に強く抱き締めた。

(よかった、本当によかった。もう目を醒ますことはないかと――!)

「…………み、やび?」

しかし抱き締められた当人は、まるで幼児が発した言葉のようにたどたどしく、舌ったらずな喋り方で呟く。

「……雅様?」

怪訝に思い体を離すと、腕の中の雅はぽかんとしていた。

いつもの雅ならば決して人前では見せない無防備な表情に、東海林の胸がざわつき始める。

(なにかが、おかしい――)

「……あなた、は、だれ?」

雅はまだぽかんとしながら、昨日と同じ言葉を吐く。

しかし、徐々にその瞳が開かれていく。

「……みやびって……、だあれ……?」

限界まで開かれた雅の瞳は動揺を現すように揺れ動き、今いる場所を確認するかのようにベッドの上を手でぺたぺたと触り続ける。

(記憶喪失――?)

呆然とそんな雅の様子を見つめていた東海林だったが、はっと気づきナースコールを押すと、すぐに担当医師が駆けつけた。

医師は目を覚ました雅に近づくと自己紹介をし、「ご自分のお名前、年齢を言ってみてください」と言った。

「……私は……私の名前は――」

雅は落としていた視線を上げ、ベッドの向かいの壁を見る。

まるでそこに自分の名前が書いてあるかのように凝視していたが、数分後、口を開いた。

「……解り、ません……」

雅は頭を抱えて、茫然自失の表情を浮かべて混乱していた。

「雅――!」

勢いよく扉を引き、大きな声を上げて入って来たのは月哉だった。

目を覚ました雅を見て、走り寄ると細い身体を抱き締めた。

「……良かった……よかった、目を覚ましてくれて――!」

月哉は涙を流して雅の背中を撫で続けていたが無反応な雅にようやく気がつき、抱き締めていた腕をほどく。

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