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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜

…その男は辺りを睥睨するように、店内に入ってきた。
常連客で賑わう店内が、水を打ったように静まり返る。
この辺りの人間には不似合いなハイブランドのスーツ、磨き上げられたイタリア製の革靴…。
すらりと背が高くその貌は整っているが、どこか色悪で…冷酷な雰囲気すら漂っていた。
…片岡の若ボンや。
オヤジの跡を継いだちゅう話やが、何しにきたんやろ…。
漁師たちはどんぶり飯を掻き込み、男を盗み見しながらひそひそと話し込む。
…男はそんな雑音を物ともせず、窓際の席に座った。
その様は如何にも尊大で、まるで傲慢な帝王のような振る舞いに澄佳には見えた。
「…片岡の若旦那や。
代替わりしたて聞いたけど、本当やったんやね…」
きんめの煮付けを皿によそいながら、祖母が不安げに囁いた。
「…片岡?」
「ここあたりの観光産業を取り仕切っている家や。
この町の旅館やホテルは今はみんな片岡さんとこのチェーンになっとるんよ。
…澄佳はここに居り。おばあちゃんが注文取ってくるよ」
…片岡の御曹司にはあまり良い噂を聞かない。
そんな男の前に年頃の孫を出したくない祖母はそう言った。
…が、祖母は一昨日脚を捻挫したばかりで、歩く時に足を引き摺る。
澄佳は祖母を制して、湯飲み茶わんと急須を盆に載せた。
「大丈夫。あたしが行くよ。
おばあちゃんは歩かない方がいいよ」
「澄佳!」
心配顔の祖母に安心させるように笑いかけ、澄佳は男の前に進んだ。
常連客で賑わう店内が、水を打ったように静まり返る。
この辺りの人間には不似合いなハイブランドのスーツ、磨き上げられたイタリア製の革靴…。
すらりと背が高くその貌は整っているが、どこか色悪で…冷酷な雰囲気すら漂っていた。
…片岡の若ボンや。
オヤジの跡を継いだちゅう話やが、何しにきたんやろ…。
漁師たちはどんぶり飯を掻き込み、男を盗み見しながらひそひそと話し込む。
…男はそんな雑音を物ともせず、窓際の席に座った。
その様は如何にも尊大で、まるで傲慢な帝王のような振る舞いに澄佳には見えた。
「…片岡の若旦那や。
代替わりしたて聞いたけど、本当やったんやね…」
きんめの煮付けを皿によそいながら、祖母が不安げに囁いた。
「…片岡?」
「ここあたりの観光産業を取り仕切っている家や。
この町の旅館やホテルは今はみんな片岡さんとこのチェーンになっとるんよ。
…澄佳はここに居り。おばあちゃんが注文取ってくるよ」
…片岡の御曹司にはあまり良い噂を聞かない。
そんな男の前に年頃の孫を出したくない祖母はそう言った。
…が、祖母は一昨日脚を捻挫したばかりで、歩く時に足を引き摺る。
澄佳は祖母を制して、湯飲み茶わんと急須を盆に載せた。
「大丈夫。あたしが行くよ。
おばあちゃんは歩かない方がいいよ」
「澄佳!」
心配顔の祖母に安心させるように笑いかけ、澄佳は男の前に進んだ。

