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フリマアプリの恋人
第5章 チャイナローズの躊躇い

…背景は…海だ。
穏やかな海に小さな港が遠くに見える。
海外ではない。
恐らくはこの辺りの海岸なのではないだろうか。
…男のやや馴れ馴れしい笑顔に比べ、澄佳は控えめな微笑みを浮かべている。
眼を見張るほどに美しいけれど、どこか儚げな雰囲気は今と変わらない。
…けれど、傍らの男に恋をしている甘い空気は感じ取れた。
それが柊司を、苦しくさせた。
嫉妬…とはまた違う。
自分の知らない…触れ合ってもすれ違ってもいない時間がここには確かにあることへの寂しさのようなものだ。
…いや…綺麗事を言っても、この傍らの男により澄佳は初めて女にさせられたのだという紛れも無い事実に、やはり胸の内が騒めいたのは確かである。
自分の狭量さに嫌気が差し、首を振る。
柊司は写真を本の間に丁寧に挟み直した。
…写真の澄佳が柊司に微笑みかける…。
…彼女とこの男の間に何があったのか…。
知りたく無いと言えば嘘になる。
けれど、澄佳が話したくないのなら柊司は尋ねる気はなかった。
…彼女にどんな過去があろうとも、自分は彼女を愛する。受け止める。
それは、揺るぎない決意であった。
柊司は元の場所に本を戻すと、ゆっくりと屋根裏部屋を後にした。
穏やかな海に小さな港が遠くに見える。
海外ではない。
恐らくはこの辺りの海岸なのではないだろうか。
…男のやや馴れ馴れしい笑顔に比べ、澄佳は控えめな微笑みを浮かべている。
眼を見張るほどに美しいけれど、どこか儚げな雰囲気は今と変わらない。
…けれど、傍らの男に恋をしている甘い空気は感じ取れた。
それが柊司を、苦しくさせた。
嫉妬…とはまた違う。
自分の知らない…触れ合ってもすれ違ってもいない時間がここには確かにあることへの寂しさのようなものだ。
…いや…綺麗事を言っても、この傍らの男により澄佳は初めて女にさせられたのだという紛れも無い事実に、やはり胸の内が騒めいたのは確かである。
自分の狭量さに嫌気が差し、首を振る。
柊司は写真を本の間に丁寧に挟み直した。
…写真の澄佳が柊司に微笑みかける…。
…彼女とこの男の間に何があったのか…。
知りたく無いと言えば嘘になる。
けれど、澄佳が話したくないのなら柊司は尋ねる気はなかった。
…彼女にどんな過去があろうとも、自分は彼女を愛する。受け止める。
それは、揺るぎない決意であった。
柊司は元の場所に本を戻すと、ゆっくりと屋根裏部屋を後にした。

