この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
家に桜の木が有るんだけど花見しないかと彼女を誘ってみた話
第1章 桜の天蓋
うちのマンションには、住民専用の小さな庭が有る。四季折々の植栽と、何本かの桜の木。
初めて、彼女をここに連れて来た。
「わあ!こんなところに……すごく綺麗!」
「今日が満開かな」
枝が長く、隣の木と絡まり合う様に伸びて、まるで桜の花の屋根の様になっている。
「川にこういう風に被さってるのは、見たことあるけど、地面でもなるんだね?……桜の天井みたい!」
「うん。だから、」
持ってきた敷物を地面に敷いて、寝転がる。
「これが、一番良く見える」
「うん!」
立って眺めていた彼女も、同じように隣に寝転んだ。
「こんなに良いとこなのに、静かだね……みんな来ないの?」
「ここは、飲食禁止なんだ。だからみんな外に行く」
「……ほんとに、お花見の為だけの場所……」
彼女が、そっとこちらに身を寄せて来る。
「……寒い?」
「ううん」
「これ……一枚しか無いけど」
「ん」
一枚のブランケットで、彼女と自分を覆う。二人分の体温の、ほんわりとした温もりが伝わって来た。
「……あったかい。」
「うん。」
しばらく何も話さずに、桜を眺めた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


