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Aさん ~私を淫らにする人~
第10章 思いもしないことが
誰もが皆、自分の出た目で歓喜、落胆の大きなジェスチャーをした。それは私も同じ。

ダイスを振って大声を出してゴールを目指しながら隣の石井さんとの間を狭めて、いつしか腕と腕が触れ合うようにしてあげていた。

石井さんもそんな状況を避けるどころか、隙を伺ってあわよくば私の肩や腰に手を回そうとしてくるのを感じて、それはヒラリ、ユラリと体を回転させて何気に避けてやり過ごしながら楽しんだ。

石井さんと別れて家に帰ると、Aさんへのお疲れ様メールをする時に、今日のあった楽しかったことを話したい気持ちを抑えるのに葛藤しながら、いつものようにシンプルに送って終えた。

そして翌日の会社では、女性社員の間で昨日の二次会に石井さんがいなかったこと、それで須藤さんの機嫌が少し悪くてその後で吹っ切ったようにはしゃいだ事がヒソヒソと語られていた。

私はそのことを教えてもらった時には、「そうだったんですか」とだけ答えて、後は何も聞かなかった。
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