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SS作品集
第34章 秋を探しに 風太

「ニャー」
お家でゴロンゴロンしているのが退屈になって、ボクは窓から屋根へ飛び移った。
もう屋根が熱くない。
一度大きく伸びをしてから、お家の裏側の壁を進んだ。
“夏”に会ったヒロに教えてもらった道。
あれから何度かヒロと遊んでる。
でも“夏”の時は暑くて、そんなに長く遊べなかった。
お家の人が“秋”になったって言ってたから、また何か違うかもしれない。
“春”はポカポカで気持ち良くて、草のところでゴロンゴロンしたい感じ。
“夏”は屋根まで熱くて、歩くだけで大変だった。
“秋”にはどんなことがあるんだろう。
サンサイのヒロなら知ってるかもしれない。
前にヒロから聞いたけど、ボクはまだイッサイになってないらしい。
イッサイになったら、お家の人がオイワイしてくれるって聞いたのに、まだオイワイがないから。
塀を歩いてって、ヒロのお家の庭に降りた。
庭っていうのは、ヒロに教えてもらったから知ってる。
車が停めてあって、お花が咲いてて、大きな木もある所。
ボクは前より少しだけ大きくなった気がする。
前に塀を登った時、その前より大変じゃなくなったから。だから降りるのも全然怖くない。
ヒロのお家の庭に降りた時、ガサッて音が聞こえた。
前足の下にあったのは葉っぱ。大きな木にくっついてたやつだ。
でも、色が違う。
葉っぱは緑だってヒロが教えてくれたけど、今は違う色。
もう一回前足で踏んでみると、またガサッて聞こえて壊れちゃった。
少し前を見ると、また同じのが落ちてる。
ジャンプして乗ると、また壊れた。
葉っぱはたくさん落ちてて、たくさん壊して遊んだ。
「ニャー?」
楽しかったけど、ヒロのお家の庭なのに壊したら困るかもしれない。
前にお家のお皿をガシャーンて壊した時、なっちゃんは「困った」って言ってた。
それに、「風太、ケガしてない?」って聞いてたし。

