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約束 ~禁断の恋人~
第4章 現実

勝手に人工知能を移植され、実験動物のように扱われる“Z”。
元々は人間だった。
研究所の三体の素性は分からないが、彼らにだって人間としての生活があったはず。
仕事に励んでいたかもしれない。
恋をしていたかもしれない。
僕達Dr.は彼らを一体、二体と数え、外国語とはいえ番号を名前として使っている。
そんな扱いをしながら彼らに感情を持たせようなんて、エゴイズムでしかないのかもしれない。
彼らが感情を持ったとしたら、それを哀しむのだろうか。悩むのだろうか。
フィーアは、僕を憎むだろうか……。
フィーアには、出来るだけ人間らしい接し方をしようと思った。名前も、人間に付けるものを使った方がいいだろう。
考えてみれば、僕はいつも彼を“4”と呼んでいる。
自分なら、そんな扱いはされたくない。
いくら感情の無い“Z”だからといって、ペット以下の扱いだ。ペットにさえ、もっと愛情を込めた名前を付けるだろう。
「カナシイ時は、眠るのもいいって、本で読んだ」
フィーアが一瞬、微かに微笑んだように見えた。
涙でぼやけた視界が見せた幻だと分かりながらも、何となく落ち着いた気分になる。
海と同じような、微笑みに見えて。
「うん。ありがとう……。今日は、もう寝るよ……」
何に礼を言ったのか、自分にも分からない。
フィーアは自ら海になろうとしているわけじゃない。海のことさえ、知らないのだから……。
それなのに僕は、海になることを強いた。
でも結果的にセックスだけが繋がりで、僕はその中に幻を見ていただけ。
愛し合っていると、勝手に思い込んで。
「レポートのクエスチョンは?」
「明日にするよ。内容を、覚えておいて」
膨大な空きメモリーに、さっき観たテレビの内容が記録される。それは、僕が言わなくても同じ。
見たこと、聞いたこと、体験したこと。その全てが記録され、“Z”は少しずつだが成長していく。でもそれは、本当にヒューマノイドと同じ。

