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自由という欠落
第10章 貴女という補い

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生まれて初めてアルコールを嚥下した。年齢的に飲酒が認められないことを訴えたところで、それが婚約相手の言い分という時点で、西原には通用しない。
西原はのはなにデカンダ一杯の酒を飲むよう強要したあと、脱衣を命じた。それから、眩暈を伴う強烈な頭痛に顔をしかめるのはなにディルドを投げて、自慰をするよう追い立てた。
快楽というより死への門に沈んでいったのはなは、やがて泥のような眠りに落ちた。目覚めると赤みを帯びた鼈甲色の部屋にいた。
部屋は、昔の拷問具と見られるものが壁を装飾していた。のはなは鉄格子の中にいたが、それら全てはレプリカだ。意識の覚醒に伴って、自分がダブルベッドに横たわっていたことを知る。
寝返りを打つと鎖が鳴った。俗世と隔離されてでもいる錯覚に陥る無音の中では、微弱な物音も耳に響く。
鉄格子の外側にいた男が振り向いた。西原はソファを立つと、のはなを舐め回すように黒目を上下に動かした。その唇をにやりと歪める。
「おはよう、のはな。よく眠れただろう。一生眠っていても構わなかったんだよ」
「あ……ああ……」
客の遊戯を盛り上げるためだけに設けられた鉄格子は、西原が扉を開くと、容易く人一人が通れるほどの隙間が開いた。
「ただし、ここさえしっかり女の役目をすれば、な」
がりっ……
「ひっ」
西原は所有物の人形を検品でもする具合に、のはなの性器に爪を立てた。今朝の潤沢は跡形もない。のはなの脚と脚の間の割れ目に、かさついた男の指が、ところ狭しとねじ入っていく。
痛覚はある。だのにほぐれてもいない小路に西原の指が侵入しても、のはなは苦痛を感じない。反して喉は呻吟する。西原をこの程度の暴虐で満足させておこうとでもしているように、のはなの深層心理がのはな自身に、しおらしい気色を強要していた。

