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第11章 壊れるほどに 奪って
「あいつが石原さとみみたいな女が好きだったのさ。
一緒にドラマ見てると目がハートだったの!」
あいつか……。
確かに以前はそんな類の女が好きだった。
いや、俺は和香奈の地雷を踏んでしまったのか!?
ヤバイ……
「和香奈は和香奈だろ?
メイクで真似たとこで石原さとみにはなれないわけだし」
「そうだよ。あのポワッとした唇を真似するの大変なんだから!」
「そういう問題か?」
「でも……あの頃は好みの女に近づきたかったんだよ、バカー!!」
「まあ、そういう努力はいつか報われるよ。
あいつだけが男じゃねーだろ」
「なんでだろうね、世の中には素敵な出会いがあって、悲しい別れがあるのは?」
和香奈の我慢して溜め込んでいた感情が一気に爆発しそうになった。
目にいっぱい涙を溜めて、それが溢れないように下唇噛み締めて俯く悲しい姿……
なるべく傷つけない言葉を頭の中で考えた。
こんな展開も予想しなかったわけではない。
でもいざその場面に出会すと……
それでも、和香奈を思いやる精一杯の言葉を口から出す前に何度も何度考えた。
「じゃなきゃ、世の中が幸せ過ぎてズレた人間ばっかになるからだよ。
人の気持ちなんて分からない、それこそバカばっかの人間になっちまうからだよ」
考えた末の……言葉だった。

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