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君に熱視線゚
第52章 君に熱視線゚〜愛の鈍行列車〜
「…ひっ……」
「やっとつかまえた…」
「……っ…」
「暴れるなって!…たく…奥さんに暴れられる旦那の身にもなれって…」
「だ、だって兄さん寝たフリして騙すからっ…」
一瞬もがいた苗を叱ると晴樹は苗の両頬を挟んで近くで見つめる。
見開いたクリクリ目の苗は確かに今怯えている。
両側から押された苗の顔はタコのように口が思いきり突き出していた。
「恐くなんかないだろ?」
「……っ…」
「俺はお前のなんだ?」
「…だ…」
「だ?」
「だんなちゃま…」
「ぷっ…」
両側から圧迫されたせいではっきりと“さ”の撥音ができないらしい。
晴樹は思わず笑ってしまった顔を直ぐに引き締めた。
「じゃあいいな…」
コホンと小さく咳払いすると、晴樹は苗の返事も待たずに頬を解放して顔を傾ける。
ゆっくりと開いた晴樹の唇が苗の口を軽く塞ぐ。
濡れた音が小さく響き、晴樹の舌先が苗の口腔で優しく游ぐ。
「はあ…っ…」
晴樹は息を継ぎながら熱い溜め息を吐いていた。

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