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せめて、今夜だけ…
第27章 海底、奥深く…
でも、もういい…。
俺はずっと、聞きたかった言葉がやっと聞けたから。
魚月の口から、俺が望んでいた言葉が聞けたから。
俺の瞳から溢れた涙が、俺の手を濡らし
俺の手に重なり合ってる魚月の手を伝い、魚月の目元へと滴り落ちて行く。
「――――――っ!」
情けねぇな。
泣かないようにしていたのに。
笑顔で別れようとしたのに。
「大好き。ずっと好きです。フランスへ行ってもお元気で…」
待ってて欲しいなんて言えない。
そんな事言っても、魚月はまた笑って言うんだろ?
"向こうで素敵な人を見つけて下さい"って。
何をどうしても、俺と魚月は相容れない運命だ。
だけど、信じるぐらいは許されるだろう。
俺達の間に、確かに愛はあった、と。
だから、これは別れじゃなくて始まりだ、と。
こんな不器用な事でしかお互いの気持ちを確かめ合えないが
俺と魚月は、確かに愛し合っていた、と。
「愛してるよ…」
「私もです…」
その言葉に、嘘はないと。
信じるくらいいいだろう。

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