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セイドレイ【完結】
第25章 暗転

そこは8畳ほどのワンルーム。
部屋の中央に敷かれた万年床と思しき布団、そしてその周りを生活用品が取り囲む。
壁にはアニメやアイドルのポスターが貼られていて、本棚には漫画や雑誌のほか、ゲームソフトやフィギュアが置かれていた。
パソコンデスクには2台のモニターと周辺機器が所狭しと並んでいる。そのほか衣類等が脱ぎ捨てられてはいるものの、慎二の部屋の散らかりに具合に比べたら遥かに問題ないレベルだ。
「へぇ~、こんなとこに住んでるんだ。いいなぁ~独り暮らし…」
「いやいや、そんなにいいもんでもないですよ、独り暮らしは──あ、亜美さんもどうぞ、適当に座ってください」
「あ、どうも…。失礼します…」
武田家以外で、男の部屋に入るのが初めての亜美は、興味深く部屋中をぐるりと見渡していた。
「こんなものしかないですけど、よければ…」
田中はそう言って、慎二と亜美にお茶を出す。
「ありがとう…ございます」
一方慎二は、部屋にある田中のコレクションを見ては、あれやこれやと興奮しているようだった。
「──とりあえず、今日は大変でしたね。師匠と亜美さんがうちにいるなんて、なんか不思議で…そもそも、部屋に人を招いたこと自体が初めてなもんで…」
「お友だちとかは…いらっしゃらないんですか?」
「友達…そうですね。ネットの中には…多少。そんなんだから、当然、彼女も居ないですし…この歳まで童貞でして。そんな時、あのサイトで師匠と出会って連絡を取り合うようになって…こんな僕に、その…亜美さんを抱かせてもらえると…いや、本来は僕なんか、天地がひっくり返っても亜美さんのような方には縁がないので…先程トイレでは、ついつい興奮し過ぎてしまい…すいません」
思いのほか礼儀正しい田中に、亜美は少々驚いてしまう。
「い、いえ…」
「あ、あの…つかぬことを…おふたりは、そもそもどういったご関係なんですか?」
田中がふたりに質問を投げかける。
亜美がどう答えようか戸惑っていると、慎二がスマホを見ながら亜美に話しかけてきた。
「──親父、今日は帰るのが明け方になるってさ。なんか偶然、古い知り合いと会ったから始発まで飲むって」
「あ…はい。分かりました」

