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サイドストーリー9
第21章 蛍の想ひ人④
梅雨が明けて、間もないというのに季節はすっかり夏で。
今朝はセミの鳴き声がにぎやかだった。
お盆には少し早いこの時期に由布子さんは毎年兄貴のお墓参りに行く―――
お盆にはうちの両親と一緒に行くのに
その少し前のこの日に、毎年必ず行く。
兄貴との思い出の日なんだろう―――
兄貴と由布子さんの10年間は、俺が入りこめない程に密なもので。
きっとたくさんたくさん思い出があるに違いない。
ひとりで来たっていいのに。
そう思いながらも、それは口に出せないでいた。
いまだに、兄貴と由布子さんを「2人きり」にする勇気がないらしい。
毎年由布子さんが理由も言わずに誘ってくれるお墓参りに俺は素直に同行する。
それでも、やっぱりほんの少しだけ「2人きり」にしてやりたくて
久保山墓地の管理をしているお茶屋さんに俺だけ寄る。
「お茶屋さんでお線香買ってくるから。先に行ってて」
お茶屋さんに入って、管理費を納めて、お線香を買う。
出していただいた冷たいお茶を椅子に座ってゆっくりと飲む。
今朝はセミの鳴き声がにぎやかだった。
お盆には少し早いこの時期に由布子さんは毎年兄貴のお墓参りに行く―――
お盆にはうちの両親と一緒に行くのに
その少し前のこの日に、毎年必ず行く。
兄貴との思い出の日なんだろう―――
兄貴と由布子さんの10年間は、俺が入りこめない程に密なもので。
きっとたくさんたくさん思い出があるに違いない。
ひとりで来たっていいのに。
そう思いながらも、それは口に出せないでいた。
いまだに、兄貴と由布子さんを「2人きり」にする勇気がないらしい。
毎年由布子さんが理由も言わずに誘ってくれるお墓参りに俺は素直に同行する。
それでも、やっぱりほんの少しだけ「2人きり」にしてやりたくて
久保山墓地の管理をしているお茶屋さんに俺だけ寄る。
「お茶屋さんでお線香買ってくるから。先に行ってて」
お茶屋さんに入って、管理費を納めて、お線香を買う。
出していただいた冷たいお茶を椅子に座ってゆっくりと飲む。

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