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炎の薔薇
第7章 妖艶さくら
狂おしいほど互いを求めて抱き合った時間を過ごしても、二人は別々の道に帰る。
日が暮れて夜を迎え、駅までの道のりを手を繋いで歩いた。
夜桜が私達を見送っていた。
サラサラと花びらを散らせ、道ゆく人を立ち止まらせるほどの美しさを放つ。
桜のように美しく儚く生きれたのなら幸せだろうに……
その美しい姿を人々の心に残し、また会いたいと思わせる。
その姿を記憶に宿して想い出と共に散ってゆけるのなら……
「夜桜も綺麗ね。妖艶な感じがまた素敵」
信号待ちの交差点に立ち止って桜を眺めた。
和也はギュッと私の手を握った。
「このままずっと一緒に……茜と居られたらいいのに」
信号が青に変われば私達は駅へと向かう。
サヨナラの時間が迫る。
「居られたらいいね」
「このまま愛の逃避行出来たら幸せなんやろうね。
俺も茜も全てを捨てるんや。
何もかも捨てて俺達の事を誰も知らん世界に行ってやり直す。
ほんまにそんな事が出来たら幸せなんやろうね……」
「行く先も決めずに夜汽車に揺られて?
不安になったら抱き合えばいい?
映画みたいな事しちゃう?」
和也をそっと見ると、目に涙を溜めて堪えていた。
和也の掌をギュッと力を込めて握る。

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