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愛おしいキミに極甘な林檎を
第31章 未来への誓い

祖父の元にいる理人さんとその弟と妹につらい過去があると思っていたけど、実際に話を聞くとなんだか悲しくなってくる。
「それに品紅山の桜も家族で見に行ったことがあるので。覚えているか分かりませんが弟にとって思い入れがあったのかもしれませんね」
「…………」
どんな言葉を返したらいいのか分からなかった。
同情するわけにもいかないし、結婚するわけでもないから期待させるようなことは言えない。
黙って外に目を向けると視界が滲む。
ぼんやりとして見えるのは窓についている多数の雨粒のせいではない気がした。
「なんで風子さんが泣くんですか」
「違います。泣いてなんかいません」
「僕に強気に当たってくる風子さんに雨は似合いませんよ」
青信号になって車が発進してからは涙が目尻から落ちたことを知られないように外を眺めていた。
「ところで、今日も塑羅緒さんのところに行くんですよね」
「止めないんですか……?」

