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愛おしいキミに極甘な林檎を
第37章 幸せな日々とその奇跡まで

思い返せば祖父と言うひとりの人間を見ていたから、本当の親のことなんてよく考えたことがなかった。
どんな人なのか分からないけど、本当の両親が私を手放さずにいてくれたら記憶を失くしてしまうほどつらい思いをする人生は送らずに済んだようにも思える。
幼い頃に求めても、手を重ねてもらえなくて、傷付いて泣くこともなかった……。
でも乙羽家の両親とソラ先輩に出会えて窮屈な世界を飛び出すことができたから、今となってはその過去を受け止められるようになったけど。
私は……、本当の親を憎んでいるんだろうか……。
どんな感情を向けるとしても、ソラ先輩の言うとおり祖父に同情するのはやめにしよう。
自分で決めた道を信じて進むために……――――
冷たい雨が降り、秋のように涼しくなった日の夜。
テーブルに置いていたスマホをソラ先輩が取ると、カシャンッと床に落としていた。
通りかかったついでに拾って、左の方の手に乗せてあげる。
「手が痛むんですか?今日はよく物を落としているようですけど……」

