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夢…獏の喰わぬ夢
第4章 五月晴れ
「僕の夢にいたの?僕が夢で何をみたのかを知っているの?」
「夢には居ないわ。」
安堵と失意が入り混じる。
夢の内容を知っていれば、僕はこのもどかしい想いを口にしないでいいのに。
「でも、見たでしょ?私を、そして約束は守らなかった。」
怒ってはいないようだ。
「ごめん。」
「いいのよ。続きは見ないでと、わざと言ったんだから。」
「えっ?」
「駄目と言われると人間って余計に執着するでしょ?、
パンドラの箱も鶴の恩返し、浦島太郎だって、
見るなと言われなければ、たいして気にもならなかったのよ。」
「じゃあ。」
有り得ないタイミングで電車が揺れて、僕は彼女の方に覆い被さるような格好になった。
素早く彼女は僕の耳元で、
「私の夢をみるように、暗示をかけたの。」
と囁き、目立たないように首筋にキスした。
「僕はまんまと君の術にハマった訳だ。」
「ハマったの?いやらしい。」
(どっちが、…)
僕は赤面した。
次の駅からは、乗り換えで身動き取れないほど車両が混雑する。
僕は、彼女を守るように腕の中に収めた。

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