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アゲマン!
第5章 可愛げのない謎

不機嫌になった沙那を気にする様子も見せずに龍平が沙那の背中を押すように客室を出ろと促す。
「何よ?」
膨れっ面のまま可愛くない言い方をしてしまう。
「飯だよ、飯…。この時間に食いっぱぐれると次は朝まで食えないし、朝はレストランが30分しかやってないからゆっくりとなんて食ってらんねぇぞ。」
龍平の言葉に傷ついた沙那は食欲なんかない。
けれども夜中にお腹が空くとかは若い女性としては恥ずかしさがある以上は黙って龍平に従うしかない。
フェリーのレストランはバイキングスタイルだ。
女性や子供向きのケーキバイキングやチョコレートタワーを見つけた沙那は食事よりも甘味のヤケ食いに走ってしまう。
「そんなもん…、よく食うな…。」
シーフードサラダ以外は食べずに3つ目のケーキを口に頬張ろうとした沙那に肉食ばかりの龍平が言う。
「放っといてよ…。」
そう言いながらも頭の中では
ああ、また可愛くない事を言っちゃった。
と沙那は凹みたくなる。
龍平からすれば、ケーキばかりであっても食欲旺盛に沙那が食べているのなら、まあ、いいかという考え方しかしていなかったのだが、龍平の考えなんか理解が出来ない沙那はただひたすらケーキを頬張り続けるだけだった。
食事を済ませて客室に戻る。
本当は船内イベントなどがあり、船旅を退屈しないようにそれらを観賞したりが出来るのだが、沙那がそんな気分じゃないと言う為に客室に戻って来たのだ。
「気持ちが悪い…。」
沙那がそんな事を言い出した。
「まさかの船酔いか?ケーキばかり食うから胸焼けをすんだよ。」
龍平がイライラとした言葉を吐く。
冷たい…。
沙那にはそう感じてしまう。
泣きそうな沙那に目もくれずに龍平が客室から出ようとする。
沙那は慌てるようにして龍平のミリタリージャケットの裾を掴んでいた。

