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アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける
わたしの荷物は香代子が持ってきてくれた。
「大丈夫か、杏咲」
声をかけられたのは、由奈さんをおんぶしている怜二さんだった。
「ええ。由奈さんもなんですか?」
「ああ、そうらしい。まったく、酒に弱いのに彼氏の前だからとなにをはしゃいだのか」
「由奈さんだって恋する乙女なんですから……って、ちょっ」
ぐらりと巽の身体がわたしに覆い被さろうとして、わたしは片足を一歩下げ、なんとか共倒れを防いだ。
「課長、二次会行きましょう!!」
そんな声が聞こえるけれど、怜二さんは困った顔をして言う。
「すまん、行かないわ。山本、いるか!?」
「はいっ!!」
香代子が返事をする。
香代子はお酒に強いため、居酒屋の飲み放題程度では潰れない。
「お前が皆を二次会連れていけ。俺達はこの酔っ払いを運んでいく。愛の歌を歌ってくれ!」
「了解です」
香代子は美女の上に美声の持ち主で、かなりのカラオケ好きだ。
二次会は彼女の独壇場になるだろう。
「杏咲、専務を頼めるか? 三嶋は俺の家の近くだから、運んでいく」
由奈さんは過去何度も粗相をして、怜二さんが始末をしたことがあるらしいことはふたりから聞いた。
由奈さんが酔うと、皆が怜二さんを呼ぶために、わたしは酔いたい気分の時も酔えなくなってしまった。
「わかりました。専務の家って、ご存知ですか?」
「知らないが、免許とか探れば出てくると思うよ」
「はは、わかりました。とにかく由奈さん、寝かせて下さいね」
「ああ。あ、杏咲。これ、タクシーチケット」
「ありがとうございます
わたし達はそれぞれタクシーを拾い、お互い正反対の方角へとタクシーは走った。

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