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大好きだから...
第9章 お前を守るよ
朱里の実家にお兄さんと先に帰ってきた朱里。
あれから泣いていない。
泣きたい時には泣いた方がいいのに
涙を見せない上に無表情でいる。
『正人くん。ちょっといいか?』
俺はお兄さんに呼ばれて
朱里を一人にした。
『朱里多分泣くの我慢してる。
泣いてもいいって言ってやって。
俺はちょっと婆ちゃんに電話してくるから。』
「分かりました。」
お兄さんと別れて朱里の元に行った。
リビングのソファーに座り込んで
一点だけを見つめている朱里をそっと抱きしめて
「朱里、辛いんだから泣けよ。
我慢するな。一緒にいるから」と伝えたのに
朱里から帰ってきた言葉は
意外なものだった。
「泣いてもお母さんは戻らないから」
低い声で感情を表すこと無く言われた。
それ以上何も言えなくなった俺は
朱里の事をぎゅっとだきしめてやるしかなかった。
朱里もしばらくすると俺のスーツのジャケットを
これでもかってくらい力を入れて掴んでいた。
ただ時間が過ぎていくだけだった。

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