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秘密のピアノレッスン
第15章 グラス

甘い余韻に包まれながら、帰り道を急ぐ。
レッスンバッグはくまのキーホルダーが揺れて、ゆいちゃんのお手紙も、クッキーも大事に入れてある。
たっぷりと愛されたせいか、寒さを感じない。先生は時間いっぱいまで、先生は私の体を愛し尽くしていた。
曲がり角を過ぎた時、家の前からまたあの黒い車が去っていくのが見えて、軽快に進んでいた足が竦む。
また来てたのか……。
家の門を開け、今は殺風景になった庭を過ぎてドアノブに手を掛ける。
力をこめるのに勇気が要ったが、ガチャリと引いてみると、玄関にはタチバナさんと同じブランドのバッグがあり、ほのかに香水の気配が残っていた。
その香りは母のものではなく、男物のスパイシーな香りだが、初めて嗅いだものではない。
バスルームから母がシャワーを浴びている気配を感じ、吐き気がこみ上げる。
母には、発表会まで二時間のピアノレッスンになっていると伝えていた。
「ふぅん」と気のない返事をされただけで、ちゃんと聞いてくれていたのかはわからなかったのだが……。
その時間。ママは、黒い車の男の人を呼ぶことにしたんだな。
さっき……先生に、あんなに幸せにしてもらったのに、一瞬で逆戻りだ。
レッスンバッグはくまのキーホルダーが揺れて、ゆいちゃんのお手紙も、クッキーも大事に入れてある。
たっぷりと愛されたせいか、寒さを感じない。先生は時間いっぱいまで、先生は私の体を愛し尽くしていた。
曲がり角を過ぎた時、家の前からまたあの黒い車が去っていくのが見えて、軽快に進んでいた足が竦む。
また来てたのか……。
家の門を開け、今は殺風景になった庭を過ぎてドアノブに手を掛ける。
力をこめるのに勇気が要ったが、ガチャリと引いてみると、玄関にはタチバナさんと同じブランドのバッグがあり、ほのかに香水の気配が残っていた。
その香りは母のものではなく、男物のスパイシーな香りだが、初めて嗅いだものではない。
バスルームから母がシャワーを浴びている気配を感じ、吐き気がこみ上げる。
母には、発表会まで二時間のピアノレッスンになっていると伝えていた。
「ふぅん」と気のない返事をされただけで、ちゃんと聞いてくれていたのかはわからなかったのだが……。
その時間。ママは、黒い車の男の人を呼ぶことにしたんだな。
さっき……先生に、あんなに幸せにしてもらったのに、一瞬で逆戻りだ。

