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秘密のピアノレッスン
第13章 12年
「はい、でもこんなにうまくは……」
「大丈夫よ。この子も、私もお師匠さんに泣かされながら練習してたわよ。って、アラサーにこの子ってまた言っちゃったわ」

からからと笑う佳苗先生に、先生は素早く突っ込んだ。

「泣いてたのは小学生の頃だよ!高校生にもなって泣くかよ」

先生が泣きながら練習を……!
驚いて先生を見上げると、「もういいだろ」とテレビを消されてしまった。そして、掛かっていたコートをばさりと翻して、袖を通している。

「更紗ちゃん、送るよ。じゃあな、母さん。もう変な体勢取るなよ」
「はぁーい。更紗ちゃん、今日は本当にありがとう。会えて本当によかったわ。心配かけてごめんなさいね」

佳苗先生と握手をした。長く美しい指はやはり先生に似ている。

「私も、佳苗先生にお会いできてよかったです……」

美しくて品があるのに、明るい佳苗先生。いつ見ても女性として憧れる。
私も、いつかこんなお母さんに……って、気が早いな……。



「乗って」

ガレージで、先生が助手席のドアを開けて待ってくれている。
「ありがとうございます」と乗り込むと、先生も運転席のドアから乗り込み、ハンドルを握った。
発表会のビデオに映っていたあのお兄さんが、今私の彼氏だなんて……。
運命って、あるんだな。

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