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霞草
第8章 別離

僕は、かなりいい加減に作ったので、霞の作品が出てくるのを待つ。
丁寧に仕上げた霞の作品は、手作りとは思えないほどの出来映えだ。
「しゅうのは?しゅうのも見せて、」
霞は二人きりの時だけ、僕を『しゅう』と呼ぶ。
「僕のはいいよ。」
と、誤魔化していると、
霞が自分のところに引き寄せて開ける。
「ああ、いいって言ったのに…」
「いいわよ。」
「……ん?」
「しゅうの、とてもいい仕上がりよ。」
乾燥させ焼き上げると縮んで、また、違う風合いになると言われたとおり、ごつくて適当にした作品が引き締まり、素朴な味のあるものとなっていた。
「へぇ…」
僕も思わずまんざらではない返事をした。
「新鋭の陶芸作家の作品って感じね。」
「霞、それは誉めすぎじゃない?」
僕は照れる。
「あら、私、もらっておこうかしら、そのうちとても貴重なものになるかも…」
「大袈裟だね。」
その後、
二人の思い出の作品を交換する。
両方宿に置く。
両方僕が持って行く。
など話したが、
結局、それぞれの作品を自分の手元に置くことになった。

