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霞草
第5章 想い

手術の技術、病床数の心配、製薬会社との交渉の話は、嫌というほど聞いてきたが…。


僕は痛感した。閉鎖的な偏った環境の中で随分歪んで不幸な成長をしてしまったことを…。


僕は率直にどうしておじさんが今の仕事をしているのか訊いた。

おじさんも昔は東京でサラリーマンをしていたそうだが、ある事情があり会社を辞め、ここに移り住んだらしい。

自給自足の生活、細々と暮らす中で花を売ったり、宿をしたり、段々と今の生活に落ち着いたのだと言う。

おばさんは、

「今じゃ偉そうに言うけど、明日の食べ物もないんじゃないかってヒヤヒヤしたことだってあったんだから。」

と笑い話のように、明るく、付け足す。


本当に仲の良い夫婦、温かみのある人柄。

僕は今まで教えてもらえなかった大事なことを、沢山吸収できる。

偶然たどり着いたと言うにはもったいないほど、素敵な出逢いに感動した。



おじさんは旨そうに酒を呑んでいたが、

「まあ、時間はたっぷりあるさ。」

と、また風呂に入るように促された。

僕は、遠慮なく風呂に入り、部屋に戻る。



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