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第37章 幕間…SS集… ⑥
「会ったら思いっきり自慢してやるんだ。こん時の美人が俺の嫁なんだぜって。」

「それはやめてよ、恥ずかしいから…そんな昔の写真…当時の格好なんて十分黒歴史でしょ…」

「でもオレらはこの時代を通って来たわけだし、あーこんなカッコしてたなーって懐かしいだけじゃないかな。子供たちに見せるのとはまた違うだろ。」

お茶を一口飲み、にっこりと笑う。
細い目がなくなっちゃいそうなくらいだけど、すごく優しい顔。
…こんな一緒に居て安心できる人、この人が初めて…

「そうだけど…」

「恥ずかしがることじゃない。桜子は今も昔もキレイだ。」

ニコニコと笑顔のまま言われて、思わず目を見開いた。

「…その惚気が恥ずかしいんだけど…そんなこと外で言わないでよ。」

「流石に外では言わないよ。でも、照れ臭いって心に秘めたまま、1回も言えないで相手に伝わらないのなんて、嫌じゃん。」


この人がそんな風に言ってくれるのはきっと、前の奥様…響子さんに対してそうだったからなんだろうな…
響子さんは、きっとこの人のこんな言葉を直接耳にすることなく亡くなった…
心でいくら思っても、言葉に出して伝えなければ相手には伝わらない…そんな考えてみれば当然で、簡単なことすら、日々の生活の中で忘れていく。相手への感謝も、労いの言葉も、愛してるという気持ちも。それを、過去の後悔がそうさせるのだとしても、折に触れて口にしてくれる誠治さんは、本当に素敵な人で。
やっぱり私は、この人が好きだ…

「…ねぇ、誠治さん。私、誠治さんが好き。」

「え?何急に…」

「心に秘めた言葉を言ってみようと思って。」

誠治さんは照れてはにかんだように笑った。



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