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サイレントエモーショナルサマー
第17章 ricordo
「藤くん…今日は汗かいてるし、シャワー浴びよ。ね」
「一緒に入ってくれます?」
「狭くない?この間ちょっとぎりぎりだったじゃない」
「この間ってなんの時です?」
「うっ…ほら、あの、えーっと、」

藤くんの手がいやらしくブラウスの上を滑り、生地の感覚を確かめるようにしながらスカートへ下りていく。下腹部に到達した手がゆったりとそこを撫でる。毛を剃り上げられた際の羞恥が脳内に甦る。

「ここの毛って結構生えるの遅いですよね」

撫でながら耳元で言われると、きゅんと下腹部が疼く。藤くんは以外と毛が頭を出し始めるのが早かったが、私の場合は自分でぼんやり思っていたよりも遅かった。

「しゃ、シャワー、シャワー浴びよ。ね、一緒に」

耳で吐息を感じる。下腹部を撫でる手を掴んで、顔を藤くんの方へ向けるとにこっと笑った彼と目が合う。身体を反転させられ何事かと訝しむと、ちゅ、と頬に藤くんの唇が触れる。ブラウスの前ボタンに指をかけ、私を見下ろす。

「ここで?た、タオルとか…」
「タオルは風呂場の前の洗濯機の上の棚ですし」
「じゃ、あと数歩移動しよう。ね。ここで脱いだら全裸で数歩動くことになる」
「全裸で家探ししてた人がなに言ってるんですか」
「いや…あの時は事後だったし」

1Kのアパートの廊下はそう長くない。今、立っている冷蔵庫の前から数歩動けば浴室に辿り着くし、浴室のドアから玄関までは2歩程度しか離れていない。全裸になることには無論抵抗はないが、冷蔵庫にチーズケーキの箱を入れた後だからなのか、この数歩が気にかかる。

もう、と息をついて動いた藤くんはバスタオルを置いてある棚に手を伸ばし、タオルの山の隣から籠を引きずり出した。彼の家でシャワーを浴びる時、藤くんはいつもそれを用意してくれる。

「ありがと」

脱いだ服をいれておく籠を見て、いざ、と服を脱ごうとするとその手を制される。ああ、そうだった。今日の彼は脱がせたいらしい。
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