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華の王妃
第9章 アンリア
王は今頃は自ら事態の収拾に追われていることだろう。
大勢の兵を踏みこませ疑わしき者がいれば捕らえて拷問にかける。
それなりに厚遇した女も気まぐれに抱いた女にも容赦はない。
「さぁもう少し召し上がり下さい。乳母が手ずから付けた
蜜漬けは滋養たっぷりですよ。」
「まぁもうお腹いっぱいですわ。」
木漏れ日が降り注ぐ東屋に珍しい果物や菓子を並べ
王弟の手ずから王妃に食べさせる姿はユリウスや腹心の侍女の
前では決して珍しい光景ではない。
侍女には仲の良い兄弟に見えるその光景もユリウスの目には
そうは映らない。
夜ごと秘めやかに逢瀬を重ねる二人の関係は夫婦同然だ。
温和で優しい王弟は仮初とは言えリンダリアが唯一寛げる
存在であり嫌悪しない男性だった。
上品で優美な少年はリンダリアの前では一人前の男で
いたいらしい。
背伸びするかのような振る舞いが多いがリンダリアを
思っての行為はリンダリアには好ましく映るようだ。
素直に口を開け食す様は中々の光景だ。
王にもその半分でも素直になって下されば王の心を
天にも昇るような心地にしようものを。
ユリウスは給仕に加わる年若い新しい侍女の姿を視界に
捕らえると供に加わったリンダリア付きの女官に目配せする。

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